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Wi-Fi の SSID 命名ルール - 使える文字と長さの制限
Wi-Fi の SSID (ネットワーク名) は最大 32 バイト。UTF-8 で日本語を使うと、漢字 1 文字が 3 バイトを消費するため、実質 10 文字程度しか使えません。カフェや空港で見かける SSID には、この制約の中で「見つけやすく、覚えやすく、安全な」名前を付けるための工夫が詰まっています。
SSID の技術的な制限
| 項目 | 制限値 | 根拠 |
|---|---|---|
| 最大長 | 32 オクテット (バイト) | IEEE 802.11 規格 |
| 最小長 | 0 オクテット | 長さ 0 は規格上の特別な値 (後述) |
| 使用可能文字 | 任意のバイト列 | 規格上は印字可能な文字に限定されない (機器側の制限は別・後述) |
| エンコーディング | UTF-8 かどうかを示す印がある | IEEE Std 802.11-2012 で定義 |
| 大文字・小文字 | 区別する | バイト列が違えば別の SSID (「MyWiFi」と「mywifi」) |
重要なのは「32 文字」ではなく「32 バイト」という点です。ASCII 文字 (英数字、記号) は 1 文字 1 バイトなので 32 文字使えますが、日本語は UTF-8 で 1 文字 3 バイトのため、最大 10 文字です。ひらがな・カタカナと日常的に使う漢字はこの 3 バイトに収まりますが、𠮟 のように UTF-8 で 4 バイトになる漢字もあり、それだけで並べた場合の上限は 8 文字になります。文字数とバイト数の違いが実務に直結する典型的な例です。
下限が 1 バイトではなく 0 オクテットになっているのには理由があります。長さ 0 の SSID は規格上ワイルドカード SSID と呼ばれる特別な値で、アクセスポイントが定期的に流す告知 (ビーコン) でこれを使うと、ネットワーク名が一覧に出てこない状態になります。これがいわゆるステルス SSID (SSID の非公開) です。
ただし、名前を隠すことはセキュリティ対策になりません。端末がそのネットワークにつなごうとするときは、端末の側が SSID を載せた問い合わせ (プローブ要求) を電波に流すため、隠したはずの名前がそこに現れます。設定済みの端末が近くにあるだけで名前は読み取れてしまう、という理屈です。SSID を非公開にすると接続できない端末が出たり、接続に手間が増えたりする副作用のほうが実際には目立ちます。名前を隠すことに労力を使うより、暗号化方式とパスワードを固めたうえで、次に述べる「名前に何を書かないか」を守るほうが効きます。
文字種別の SSID 使用可能文字数
| 文字種 | 1 文字あたりのバイト数 (UTF-8) | 32 バイトで使える文字数 | 例 |
|---|---|---|---|
| ASCII 英数字 | 1 バイト | 32 文字 | MyHomeNetwork-5GHz-2F |
| 日本語 (ひらがな・カタカナ) | 3 バイト | 10 文字 | うちのワイファイ |
| 日本語 (漢字) | 3 バイト | 10 文字 | 田中家無線 |
| 絵文字 | 2〜25 バイト (種類による) | 4 バイトの絵文字なら 8 文字 | 😀 は 4 バイト・☀ は 3 バイト |
| 混合 (英数字 + 日本語) | 1〜3 バイト | ケースによる | Cafe-東京 (11 バイト) |
絵文字は「1 文字 4 バイト」とまとめて語られがちですが、実際は種類でかなり違います。UTF-8 でバイト数を数えると、😀 や 🏠 のような絵文字は 4 バイト、☀ や ⚠ のように記号から絵文字になったものは 3 バイト、© は 2 バイトです。逆に肌の色を指定した 👍🏽 は 8 バイト、4 人家族の 👨👩👧👦 は見た目 1 文字で 25 バイトを使います。家族の絵文字を 1 つ置くだけで 32 バイトの 8 割が消えるということです。加えて、絵文字入りの SSID を正しく表示できるか、そもそも接続できるかは機器によって異なります (2026 年時点)。設定画面で入力できても別の端末の一覧では豆腐 (□) に化けることがあり、生活で使うネットワークの名前には向きません。
そもそも、規格の上で 0 〜 32 オクテットの任意のバイト列が置けることと、手元の機器でそれを入力できることは別の話です。設定画面が受け付ける文字の種類は機器によって異なり (2026 年時点)、空白や一部の記号を弾く機種もあります。使いたい記号が通るかどうかは、規格ではなく実際に使うルーターの設定画面で確かめるのが確実です。
SSID の命名ベストプラクティス
| 目的 | 推奨パターン | 例 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 家庭用 | 識別しやすい英数字 | Tanaka-Home-5G | 近隣と区別できる |
| オフィス | 会社名 + フロア + 帯域 | ACME-3F-5GHz | 管理しやすい |
| カフェ・店舗 | 店名 + Free/Guest | CafeBlue-Free | 客が見つけやすい |
| イベント | イベント名 + 年 | TechConf2026 | 一時的な利用に適する |
SSID に含めてはいけない情報
セキュリティの観点から、SSID に含めるべきでない情報があります。
| NG パターン | 例 | リスク |
|---|---|---|
| 個人名 + 部屋番号 | Suzuki-301 | 住所の特定につながる |
| ルーターの機種名 | Buffalo-WSR-5400 | 脆弱性の特定に悪用される |
| パスワードのヒント | pass-is-birthday | パスワード推測の手がかり |
| ISP 名 | NTT-Flets-Tanaka | 契約情報の推測 |
パスワードの文字数とセキュリティで解説したように、ネットワークのセキュリティは名前の付け方から始まります。SSID はビルの外からでもスキャンできるため、個人を特定できる情報は含めないのが鉄則です。
面白い SSID の世界
SSID は 32 バイトの自由な表現空間でもあります。ここでは、この種の SSID としてよく知られている例を挙げます (バイト数はいずれも UTF-8 で数えたもの)。
| SSID | バイト数 | 意図 |
|---|---|---|
| Pretty Fly for a Wi-Fi | 22 | The Offspring の曲名のパロディ |
| FBI Surveillance Van | 20 | 近隣へのジョーク |
| Get Your Own WiFi | 17 | タダ乗り防止メッセージ |
| It Burns When IP | 16 | IT ジョーク (IP アドレスと掛けている) |
| Tell My WiFi Love Her | 21 | 「Tell My Wife I Love Her」のパロディ |
32 バイトという制約の中で、ユーモアやメッセージを込める。X (旧 Twitter) の 140 文字制限が独自の文化を生んだように、SSID の 32 バイト制限も小さな表現文化を生み出しています。
5 GHz と 2.4 GHz の SSID 命名戦略
デュアルバンドルーターでは、2 つの周波数帯に別々の SSID を付けるか、同じ SSID にするかを選べます。
別々にする場合は「Home-5G」「Home-2G」のようにサフィックスで区別します。同じにする場合は、バンドステアリングに対応したルーターであれば電波状況に応じて帯域が振り分けられます (非対応の機器では、どちらにつなぐかは端末側の判断に委ねられます)。管理の手間を減らすなら同一 SSID、帯域を手動で選びたいなら別 SSID が適しています。
いずれの場合も、サフィックス分のバイト数 (「-5G」で 3 バイト) を考慮した命名が必要です。32 バイトの制限は、帯域の区別まで含めて設計する必要があるのです。