ローマ字
日本語をラテン文字 (アルファベット) で表記する方式。ヘボン式と訓令式が代表的。
ローマ字とは、日本語の音をラテン文字 (アルファベット) で表記する方式です。16 世紀にポルトガルの宣教師が日本語を記録するために考案したのが起源とされ、その後さまざまな表記体系が発展しました。現在では国際的な場面での日本語表記、パスポート、駅名標識、道路標識など、日本語を知らない人にも読める形で情報を伝える手段として広く活用されています。
代表的な表記方式にはヘボン式 (Hepburn) と訓令式 (Kunrei-shiki) があります。ヘボン式は英語話者にとって発音しやすい表記で、パスポートや鉄道の駅名表示に採用されています。たとえば「し」は "shi"、「つ」は "tsu" と書きます。一方、訓令式は日本語の音韻体系に忠実で、「し」を "si"、「つ」を "tu" と表記します。使い分けは場面ごとに分かれており、国語の教科書では訓令式、英語の教科書や人名・標識などの固有名詞ではヘボン式が使われてきました。訓令式を定めていた 1954 年の内閣告示は 2025 年に改定され、ヘボン式にあたるつづり方を基本とする形へ切り替わっています。教科書や公的書類の表記が入れ替わるまでには時間がかかるため、2026 年時点では両方式が併存する過渡期として扱い、参照する資料がどちらに基づくものかを確かめてから使うのが安全です。
日本語入力 (IME) ではローマ字入力が主流の入力方式です。キーボードからローマ字を打つとひらがなに変換され、さらに漢字やカタカナへの変換候補が表示されます。ローマ字入力はアルファベット 26 キーの配置を覚えるだけで済むため、かな入力 (50 音配列) と比べて習得が容易です。1 文字を打つのに必要な打鍵数はかな入力の方が少なく、慣れれば速く打てる余地がありますが、覚える配列の負担が大きいため使う人は少数にとどまり、日本語入力はローマ字入力が事実上の標準になっています。
URL やファイル名に日本語を含める場合、ローマ字表記が使われることがあります。日本語をそのまま URL に含めるとパーセントエンコーディングにより文字列が長大になるため、ローマ字でスラッグを作成するのが一般的です。たとえば「東京タワー」を URL に含める場合、tokyo-tower のようにローマ字とハイフンで表記すると、短く読みやすい URL になります。ここで注意したいのは、ローマ字化で情報が落ちる点です。長音を落とすと「小野」と「大野」がどちらも ono になり、「ん」の後に母音が続く場合の切れ目を示すアポストロフィ (shin'ichi の形) も URL では使いにくいため、shinichi と書くと「しんいち」と「しにち」の区別が消えます。スラッグは後から変えると転送設定が必要になるので、方式と長音・促音の扱いを最初に決めて一覧にしておくのが実務的です。
ヘボン式と訓令式の違いは、実務上の混乱を招くことがあります。パスポートの氏名表記はヘボン式が原則ですが、クレジットカードや銀行口座の名義と一致しないケースが発生します。また、長音の表記 (「おう」を "o" とするか "ou" とするか) や撥音「ん」の扱い (b/m/p の前で "m" とするか "n" とするか) など、細かいルールの違いが文字数にも影響します。
文字数カウントの観点では、ローマ字は半角英字として 1 文字ずつカウントされます。同じ日本語をひらがなで書く場合と比較すると、ローマ字表記の方が文字数が多くなる傾向があります。たとえば「さくら」は 3 文字ですが、ローマ字では "sakura" で 6 文字です。バイト数で見ると、ひらがなは UTF-8 で 1 文字 3 バイト (計 9 バイト) に対し、ローマ字は 1 文字 1 バイト (計 6 バイト) となり、バイト効率はローマ字の方が優れています。