フリック入力
スマートフォンのタッチスクリーンで、キーを上下左右にフリックして文字を選択する日本語入力方式。トグル入力より高速。
フリック入力は、スマートフォンの日本語入力方式の一つです。テンキー配列のキーをタップすると「あ」行の文字が入力され、上下左右にフリック (指を滑らせる) すると「い」「う」「え」「お」が入力されます。従来のトグル入力 (同じキーを複数回タップして文字を切り替える方式) と比べ、どの段の文字でも 1 操作で入力できるため、操作回数が減ります。
| 出したい文字 | トグル入力の操作 | フリック入力の操作 |
|---|---|---|
| か | 1 タップ | タップ |
| き | 2 タップ | 左フリック |
| く | 3 タップ | 上フリック |
| け | 4 タップ | 右フリック |
| こ | 5 タップ | 下フリック |
トグル入力は同じキーを押した回数だけ段が進むため、お段の「こ」を出すには 5 タップかかります。フリック入力はどの段でも 1 操作で、変わるのは指を離す方向だけです。この十字の並びはあ行からま行・ら行のキーでも同じで、方向とあ段〜お段の対応は変わりません (や行・わ行だけは 5 文字そろわないため例外です)。
速度の差は操作回数から見積もれます。あ段からお段までが均等に出てくる文字列なら、トグル入力は 1 文字あたり平均 3 タップ必要ですが、フリック入力はどの文字も 1 操作です。実際の日本語はあ段・い段の出現が多いため差はこれより縮まりますが、お段やえ段が続く語ではフリック入力の優位がはっきり出ます。両手で打つ QWERTY 配列のキーボードほどの速度は出にくく、片手で端末を持ったまま入力できる状況での効率が持ち味です。入力速度は慣れと個人差の影響が大きいので、公表されている平均値をそのまま自分の目安にしない方が実態に合います。
この方式の草分けは 1998 年に Newton OS 向けに開発された日本語入力システムで、広く普及したきっかけは 2008 年に iPhone が日本語入力にフリック方式を採用したことです。その後 Android でも標準的な入力方式になりました。日本以外ではほとんど使われておらず、ラテン文字圏では QWERTY 配列のソフトウェアキーボードとスワイプ入力、中国語圏では拼音入力が主流です。五十音の行段構造とフリックの 5 方向 (タップ + 上下左右) がよく噛み合った設計ですが、5 方向すべてがあ段〜お段に対応するのはあ行からま行・ら行までです。や行は「や・ゆ・よ」の 3 文字、わ行は「わ・を・ん」に長音符「ー」を加えた形になり、余った方向には記号などが割り当てられます (具体的な割り当ては OS やキーボードアプリで異なります)。
実務上の注意点は、誤操作の型がトグル入力とは違うことです。フリックの移動距離が判定のしきい値に届かないとタップと解釈されてあ段の文字が入り、指が隣のキーへずれると別の行の文字になります。どちらも入力自体は成立してしまうので、画面を見ずに打つと気づけません。長文を入力するときは、変換して確定する前にかなの並びを一度読み返す習慣をつけると、こうした取りこぼしを拾えます。とくに固有名詞や数字を含む文は、確定後にもう一度目を通す価値があります。